ヒューリスティックレビュー
ヒューリスティックレビュー(Heuristic Review)は、ユーザビリティ評価手法の一つで、専門家が既知のユーザビリティ原則(ヒューリスティック)に基づいて、ウェブサイトやアプリケーションのユーザインターフェース(UI)を評価する方法です。この手法は、ユーザビリティの問題点を特定し、ユーザー体験の向上を図るために用いられます。
ヒューリスティックレビューの特徴
専門家による評価:
ユーザビリティの専門家がレビューを行い、ユーザインターフェースの問題点を洗い出します。
既知の原則に基づく:
ヒューリスティック(経験則)に基づいて評価を行うため、体系的かつ標準的な方法で問題点を特定できます。
迅速な評価:
ユーザビリティテストと比べて迅速に実施でき、初期段階で多くの問題を発見できます。
費用対効果が高い:
実ユーザーを必要とせず、専門家のレビューのみで行うため、比較的低コストで実施できます。
代表的なヒューリスティック
ヒューリスティックレビューでよく使用されるのは、Jakob Nielsenが提唱した10のユーザビリティヒューリスティックです:
システム状態の視認性(Visibility of System Status):
ユーザーに現在のシステム状態を常に知らせる。適時で適切なフィードバックを提供する。
システムと現実世界の一致(Match Between System and the Real World):
ユーザーの言語や概念を使い、自然な順序で情報を提示する。ユーザーの期待に沿った操作が可能であること。
ユーザーの操作制御と自由度(User Control and Freedom):
ユーザーが間違った操作をしても簡単にやり直せるようにする。明確な「戻る」や「取り消し」のオプションを提供する。
一貫性と標準(Consistency and Standards):
同じ用語やデザインを一貫して使用し、業界標準に従うこと。
エラーの防止(Error Prevention):
エラーが発生する前にユーザーに警告を出す。エラーメッセージが不要な設計を目指す。
記憶の負担を最小限に(Recognition Rather Than Recall):
必要なオプションや操作が画面上で見えるようにし、ユーザーが思い出す必要を最小限にする。
柔軟性と効率性(Flexibility and Efficiency of Use):
初心者と上級者の両方が効率的に操作できるようにし、ショートカットキーなどの提供。
美的でミニマリストなデザイン(Aesthetic and Minimalist Design):
必要のない情報や要素を排除し、シンプルで美しいデザインを心がける。
エラーメッセージの理解と修正(Help Users Recognize, Diagnose, and Recover from Errors):
エラーメッセージは簡潔で、問題を理解しやすく、修正方法を示すこと。
ヘルプとドキュメント(Help and Documentation):
必要に応じてユーザーが簡単にアクセスできるヘルプやドキュメントを提供する。
ヒューリスティックレビューの実施手順
準備:
レビュー対象となるウェブサイトやアプリケーションを選定し、評価基準となるヒューリスティックを明確にします。
専門家の選定:
ユーザビリティの専門家やUI/UXデザイナーを集め、レビューを実施します。複数の専門家による評価が望ましいです。
個別評価:
各専門家が独立して評価を行い、問題点をリストアップします。評価はスクリーンショットやメモを用いて詳細に記録します。
問題点の共有とディスカッション:
評価結果を専門家同士で共有し、ディスカッションを通じて問題点を整理します。優先度を設定し、重大な問題を特定します。
レポート作成:
発見された問題点をまとめ、改善案を提案するレポートを作成します。具体的な改善策や優先度を含めることが重要です。
改善策の実施と再評価:
提案された改善策を実施し、その効果を再評価します。必要に応じて再度ヒューリスティックレビューを行います。
まとめ
ヒューリスティックレビューは、ユーザビリティ専門家が既知のユーザビリティ原則に基づいてウェブサイトやアプリケーションのUIを評価する手法です。迅速かつ費用対効果が高く、初期段階で多くのユーザビリティ問題を発見できるため、ユーザー体験の向上に役立ちます。Jakob Nielsenの10のユーザビリティヒューリスティックがよく使用され、評価手順には準備、専門家の選定、個別評価、問題点の共有とディスカッション、レポート作成、改善策の実施と再評価が含まれます。