グロスとネットの違い|広告費・代理店手数料の計算例

2026年6月1日

著者: 与謝秀作
グロスとは?意味・関連用語との違い・活用方法を徹底解説

広告の見積書で使うグロスとネットは、何を含む金額かを明示して初めて比較できます。同じ「手数料20%」でも、請求総額を分母にするか媒体費を分母にするかで金額は変わります。この記事では広告料金の例を中心に、内訳、計算式、CPA・ROASへの影響を確認します。

グロス・ネットは何を含む金額か確認する

広告取引では、グロスを代理店手数料などを含む総額、ネットを媒体へ支払う費用という意味で使うことがあります。ただし、すべての契約で同じ定義とは限りません。制作費、ツール費、消費税、値引きの扱いまで、言葉だけから判断しないでください。

まず「媒体費」「管理・運用手数料」「その他の費用」を別々に書き出し、その契約でグロスとネットがどの行を指すかを確認します。ネット媒体費は利益ではありません。請求総額から手数料を引いた媒体費と、売上から原価や各費用を引いた利益は別の数字です。

広告費と手数料を分けて見積書を読む

手数料は固定額、一定の基準額に対する率、最低料金との組み合わせなど、契約によって異なります。20%を相場や標準とみなすのではなく、見積書の式を読める形にします。Google広告の第三者向けポリシーでも、媒体費と管理費などの料金の透明性が求められています。

以下の8項目を確認してから、予算や成果単価を比較してください。グロス・ネットという見出しだけで合意するより、含める項目と計算の順序を記録する方が誤解を防げます。

確認項目

確認する内容

1. 媒体費

広告プラットフォームへ支払う額か。請求総額と区別されているか

2. 手数料の基準額

媒体費、総額、その他のどれに率を掛けるか

3. 率または固定額

率・月額・段階制などの式と適用条件

4. 最低料金

率による額が下回った場合に何を請求するか

5. 制作・ツール費

別請求か、手数料に含むか

6. 税

税抜・税込、課税対象と丸め方

7. 値引き・返金

割引や広告費返金が手数料にも反映されるか

8. 期間・通貨

対象月、締め日、為替換算の条件

グロス基準の手数料率で計算する

ここでは税・制作費などを除き、総額Gが媒体費Nと手数料Fの合計になる架空例を使います。手数料率rがグロス総額を分母にする場合、式は次のとおりです。

  • 手数料 F = G × r
  • 媒体費 N = G × (1 − r)
  • 総額 G = N ÷ (1 − r)

媒体費を800,000円確保し、グロス基準の手数料率を20%と仮定すると、総額は800,000 ÷ 0.8 = 1,000,000円、手数料は1,000,000 × 0.2 = 200,000円です。媒体費800,000円に20%を足す計算ではありません。

逆に総額1,000,000円が決まっているなら、媒体費は1,000,000 × 0.8 = 800,000円になります。どちらの金額を先に固定しているかも確認してください。これらは計算を説明する数字で、実際の代理店料金を示すものではありません。

ネット基準の上乗せ率との違いを比べる

ネット媒体費に対する上乗せ率mを使う場合は、総額G = N × (1 + m)、手数料F = N × mです。媒体費800,000円と上乗せ率20%なら、総額960,000円、手数料160,000円になります。

条件:媒体費800,000円

グロス基準20%

ネット上乗せ20%

手数料の分母

総額1,000,000円

媒体費800,000円

手数料

200,000円

160,000円

総額

1,000,000円

960,000円

同じ20%でも、この例の総額差は40,000円です。グロス基準20%は、媒体費に対して200,000 ÷ 800,000 = 25%の上乗せと同じになります。一般に、グロス基準率rと等しいネット上乗せ率はr ÷ (1 − r)です。比較ではパーセントの数字だけでなく分母をそろえます。

CPA・ROASの広告費の範囲をそろえる

広告のCPAは対象費用 ÷ 定義した成果件数、ROASは対象売上 ÷ 対象費用 × 100で計算します。どの費用を含めるかによって値が変わるため、報告書に費用範囲を記載します。

上のグロス総額1,000,000円・媒体費800,000円のケースで、同じ期間・帰属条件の成果50件、売上2,000,000円と仮定します。成果と売上は同じままでも、分母によって以下の違いが生まれます。

費用の範囲

CPA

ROAS

媒体費800,000円のみ

800,000 ÷ 50 = 16,000円

2,000,000 ÷ 800,000 × 100 = 250%

手数料込み1,000,000円

1,000,000 ÷ 50 = 20,000円

2,000,000 ÷ 1,000,000 × 100 = 200%

いずれも利益率ではありません。原価、返品、対応費、制作費などが残っていれば、利益を判断するにはそれらも必要です。また、ROASの売上がすべて広告によって新たに生じたと、この計算だけで証明できるわけではありません。

他分野の用語と混同しないための確認項目

grossとnetは広告以外にも使われますが、何を差し引くかは文脈次第です。例えば売上総利益は、売上から売上原価を控除した利益です。「グロスは何も引く前の数値」という一つの説明ですべてを処理できません。

会計での売上の総額・純額表示も、広告見積の内訳とは別の問題です。本人か代理人かなどの判断を伴い、見栄えのよい方を自由に選ぶ意味ではありません。この記事の計算例を個別の会計・税務処理の根拠にせず、該当する基準と専門担当者に確認します。

見積を受け取ったら、媒体費、手数料の分母、その他費用、税を一行ずつ確認し、同じ条件の総額に計算し直してください。成果報告でも費用の範囲をそろえれば、手数料の差と運用成果の差を混ぜずに比較できます。

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